竜舌蘭 ウッパマ編4
夜の間は竜舌蘭を立てかけて、
星や月の光を浴びさせる。
穴を開けるときに、
月桃の葉っぱを浸した水を用いたように、
ここウッパマでは、
万物の働きが惜しみなく降り注がれる。
人の都合を意に介さない
激流に身を預けた時に、
新たな再生の兆しが訪れるのだ。
翌日も折をみて作業を続け、
少しずつ筒の芯がくり抜かれていく。
そして、とうとう竜舌蘭トンネルは開通した。
ウッパマを訪れた方が、
翌日11月11日が誕生日である事が判明した
2017年11月10日に、棒がスポンと筒を通り抜けた。
近くに落ちていた木も集めて、
くり抜いた芯の部分を集めて着火すると、
割合燃えやすく、貫通したての竜舌蘭を火で炙っていく。
ゴミは作らずに、なるべく循環させていきたいためだ。
作業をしている東屋は、
竜舌蘭の野外工房と化していて、
クバの葉も角に置いた。
霊力があり、魔除けにも使われた植物であるが、
こうした風習の背景には、
身近にあるものを活かした結果、
自然とそうなっていたというのが、
経験則で言えば適切なのかもしれない。
手足を動かしながら、
その時に浮かんだインスピレーションを元に、
あれこれ試してみるうちに感覚は冴えてくる。
ついに空洞化された竜舌蘭を見て、
次に思いついたのは、
「海の記憶を馴染ませること」だった。
高く伸びる竜舌蘭は、すぐそばの海風を浴びているのは確かだが、
海水につけると木が腐りにくくなる
という話を聞いたばかりだったので、
満潮と干潮の時間を調べ、
竜舌蘭を担ぎ、浜辺に向かった。
東村のウッパマビーチのウッパマとは、
「ウプ(大きい)ハマ(浜)」を意味し、
ポイントによって色が異なる地層の様相を
見ることが出来る。
ハワイにも繋がっているような断崖や、
宇宙交信のためのアンテナのような巨石が、
遠くに見えて、
ウプの本来の意味は、
「宇宙」を表すのではないだろうか。
映画コンタクトに出てきたような海のスケールの広さは、
訪れる人が経験する内なる原体験が、それを証明する。
ウッパマには、左右からの海の流れが合わさる所があり、
その砂浜の下に、空洞竜舌蘭を一晩埋める事にした。
手で砂を掘って、筒も呼吸できるように空気に晒す。
潮の満ち引きによって、海水も中まで入り込み、
母なる海の記憶に浸かりながら、
水気を含んだ砂に埋める。
ひんやりとした無数の泡が、どこからともなく現れて、
竜舌蘭を覆っていた砂を取り去っていく。
このままでは、波に連れさられそうなので、
さらに深く砂を掘り、竜舌蘭は地中に潜った。
すると突然、雨粒がポタポタ落ちてくる。
この時、ちょうど夕方の六時。
天地を結ぶ雫に晒されながら、
一晩浸けて、また明日の朝取りに行く事にした。
続く。