竜舌蘭 ウッパマ編5
翌朝早くに目が覚め、
さっそくウッパマビーチに、
竜舌蘭の様子を見に行った。
そばの牧場の前を通ると、
人懐っこい子ヤギは
時折鳴きながら、悠々と草を食み、
歩きまわっている。
アダンの木の間を抜ければ、
目の前には海景色が広がり、
日の出を迎えようとしている。
昨日埋めた場所は目印もつけておいたので、
それを頼りにいざ砂を掘り返した。
…が、掘っても掘っても出てくる気配がない。
あれ??思いながら、辺りをうろついては、
再度掘り返す。
手のシャベルで掻き分けても、
水で湿った重い砂が手のひらに積まれるばかりで、
肝心の竜舌蘭の硬い感触がどこにもない。
宮古島でクリスタルパイプが割れたのに引き続き、
竜舌蘭のディジュリドゥも海に流されてしまったのか。。
干潮時間に合わせていたので、
流されるはずはないだろうと見込んでいたが、
波の音が虚しく響くばかりの浜には、
小さいモノリスのような黒い漂着物が、
打ち上げられた。
意気消沈して、その場に座りこんで、
しばらくすると、突然砂の中から
2つの小さい目がピョコンと飛び出し、
小さなヤドカリが顔を出した。
慰めに来てくれたのかと話かけようとするも、
こちらの事は、見向きもせずに、
遠くの砂浜を見つめている。
その目線の先には、もしかしたら竜舌蘭ディジュリドゥかと
思える物体が、150mくらい先に確認出来、
淡い期待を込めながら砂浜を歩き出した。
幸いな事に竜舌蘭は打ち上げられていた。
昨晩波に揺られ、海を旅した竜舌蘭は、
そっと砂浜に、丁寧にお供えされているようでもあった。
誰もいない砂浜で、竜舌蘭とのハグを交わし、
再度埋めた場所で、海に向かってお礼を申し上げた。
月、植物、星、太陽、海、雨、珊瑚、、
次々に万物の記憶が交わってゆく。
まだ水分を多く含んだ竜舌蘭を珊瑚の上に乗せ、
朝日を浴びた。
祝福の天使の梯子が降り注いでいた。
続く。