竜舌蘭 ウッパマ編3

翌日から作業は始まった。
まずは乾燥した茎の表皮を鉈(なた)で削いでいく。

皮が剥けると、光沢が現れ、ツルツルとした手触りと、
光沢が現れ、内包していた美しさが、
人と植物の共同作業によって現れるのが、
たまらなく心地がいい。

枝が生えていた所を刈りとると、
黒い線で描かれた地図のようなものが
浮かびあがってきた。
かつての地球、もしくは未来の地球の
大陸の形状を連想させる。

芯の部分は腐敗が進んで、
手でむしり取れるくらい柔らかく、
これは結構容易に穴を貫通させる事が出来るかもしれない。

月桃の葉っぱを水につけて、
その水を芯の部分に湿らせ、
ヤスリや棒を使い、ほじくり出していく。

オーストラリアの先住民アボリジニが作る
ユーカリのディジュリドゥは白アリが食べて、
空洞になったものである。
竜舌蘭のディジュリドゥは、今あるものを
人の手で活かし、万物の働きが合わさり、
出来上がっていくと直感した。

時間も忘れて、夜間もライトを照らしながら、
少しずつ竜舌蘭の穴が開いていく。

そばでBBQを楽しんでいる仲間達の声が、
耳まで入ってきて、呼ばれても返事が出来るのだが、
神経が作業に向けられているので、
会話どころではない。
これがいわゆる「ゾーン」という精神状態なのだろうか。

ただひたすらに、筒の奥にある見えない芯を削り、
つついては取り出していく。
ディジュリドゥを作るために穴を開けるというよりも、
穴を開けたいから開けようとしている。

ユーカリに見事な穴を開けたシロアリも、
きっと美味しそうから食べただけで、
ディジュリドゥを作ろうとは微塵にも思ってないはずだ。
この意思が自然界の妙なる働きである。

トンネル開通の目処が立った所で、
柱を東屋に立てかけ、寝床についた。

続く。

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