竜舌蘭 ウッパマ編6

一晩海水に浸かった竜舌蘭を
ウッパマまで持ち帰り、
太陽の光で乾かしていく。

竜舌蘭の筒は花茎のため1kgに満たない軽さで、
女性や子どもでも片手でひょいと持つ事が出来る。
ユーカリのディジュリドゥは、2kg以上の重量はある。

大分乾いた後で、
試しに唇を振動させながら息を吹き込んでみると
柔らかな原始的な低音が広がり、
ようやく産声をあげた。

ここで宮古島の雑貨屋さんで
手に入れたフランキンセンス(乳香)の樹脂の存在を思い出し、
鞄から取り出した。
鍋で煮詰めながら亜麻仁油に混ぜ、
樹脂とオイル混合物を筒の中に流し込んでいく。
聖書の世界で、キリストの誕生を祝い、贈られた
精神の安定をもたらすとされる乳香は、
産声を挙げた芯の部分に一気に注がれた。

酸味を含んだ気高い芳香が立ち込め、
振動が物体化したかのように、樹脂の突起が筒内の襞を構成する。
いよいよ今までの工程が一気に凝縮される終盤に差し掛かり、
残された大事な作業は、
吹き口に蜜蝋を塗り込むのみとなった。

続く。

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